シンプルなものから凝ったものまで、いままでにいろいろな名刺を見てきた。
もし「いちばん美しかった名刺は?」と聞かれてもすぐに答えられそうにない。
ただ、「いちばん印象に残っている名刺は?」と聞かれたら、僕はすぐに答えることができる。
あれぐらい自分たちをうまく表現している名刺って、ちょっとほかではお目にかかれないと思う。
渡辺平日(以降 渡辺 と表記)
最近は名刺をアプリで管理する人が増えてるらしく、かく言う僕もすぐにスキャンして、「原本」はファイルで保管しています。もしかしたら名刺は単なる情報伝達ツールになりつつあるのかもしれません。
なんとも微妙な立ち位置にいる名刺ですが、個人的にはけっこう好きでして、特に素敵なものは別のファイルでコレクションしています。なかでもTENTさんの名刺は特に印象に残っています。
「なぜこの形をしているのか?」という理由というか、必然性が感じられるのがいいですよね。
しかも展示会などでポップのように使えるという実用性もあると。
今回はこの名刺についていろいろと伺いたいと思います。
まず、「TENT」という名前はどのタイミングで誕生したんですか?
TENT青木(以降アオキ と表記)
いまから10年くらい前まで遡りますが、当時、僕と治田さんはそれぞれ個人で活動していたんですね。
それであるとき、合同で展示会に出展しようとなって。展示会に参加するならユニット名が必要なので、いろいろと候補を考えて、そのなかに「TENT」もありました。
うろ覚えですが、名前を考えながら名刺のデザインも考えてたんでしたっけ?
TENT治田(以降 ハルタ と表記)
なんせ10年も前だからそのあたりは曖昧ですね。
アオキ
あれこれ考えているときに、折ってテントになる名刺のアイデアを思いついたんです。「これはいいぞ!」と盛り上がりました。
ハルタ
たしかプリンターで試作品を作りましたよね。で、「これは配りたいね」となったと。
渡辺
なるほど。名刺のアイデアが、ユニット名にも大きく関わっていたんですね。
そういえば以前、ユニット名には「風通しのいいチームにしたい」という想いを込めたと聞きました。
名刺が先ということは、その由来はあとからついてきたものなのでしょうか?
アオキ
それがちょっと微妙なあたりで……。当時、治田さんがずっと、「雨が降ってきたらすぐに畳んで別の場所に動けるのが大事だよね」と語っていて。
雨というのは「不景気」のたとえなのですが。
一同
(笑)
青木
そういう由来とか、名刺のアイデアとかが、ほぼ同時期に生まれた―
というのが正確なところだと思います。
アオキ
いろいろなものを受け入れられる環境から、いろいろなものを受け入れられるプロダクトを作りたい。そういう想いもユニット名に込めています。
「新しく場所を作るなら、家族とか友達とかを気軽に呼べるような雰囲気にしたいな」と考えていて。
そういう意味でも「TENT」ってぴったりだなと、改めて思います。なんかこう、敷地をワンちゃんが走り回ってる感じというか。
渡辺
ケンケンさんは3年前にテントに加わっていますが、自分の名刺をはじめて手にしたときはどうでしたか?
アオキ
あとから名刺を使う立場になった人の意見、聞きたいです。
ケンケン
それはもう……めっちゃ嬉しかったです。
一同
(笑)
渡辺
そういえば、中央に折り曲げるための線が入ってますよね。これは名刺の仕様としては非常に珍しい気がします。
アオキ
そうですね、名刺としてはかなり珍しいと思います。
治田
パンフレットなどではよく見かけますが、名刺だとなかなかないですね。昔からある技術の応用と言うか。
渡辺
「見慣れているものを、ちょっとだけ変えて、新しいものにする」のは、TENTのお家芸ですよね。
名刺ってふつうは「プロダクト」とは言いませんが、僕はこれはれっきとしたプロダクトだと感じました。
僕はこれをモチーフにしたグッズがほしいです。こう、スチールかなにかでできてて、ずっと使えるような……。
アオキ
なにかできるかな、ちょっと考えてみます。
いろいろと興味深い話がありましたが、個人的には「自分の名刺を持つようになったときに嬉しかった」と話すケンケンさんの笑顔が印象的でした。
もし自分がチームを作り、名刺を用意することになったら、スタッフに喜んでもらえるようなものを作りたいです。
それにしても、こんなに話が広がるとは思いませんでした。この名刺にはまだまだ裏話がありそうですね。
「もっと聞きたいよ」という方は #TENT10th というタグをつけてツイートしてみてください。TENTさんからなにかリアクションがあるかもしれませんよ。
2020年10月、テントは10期目を迎えました。
今まで「点々」とやってきましたが、これを機に「線」にしたいなと思い、いくつかの企画を立ち上げることにしました。
メイン企画である、この「10年目の点と線」では、日用品愛好家の渡辺平日さんとともに、これまでに作ってきたアイテムを1つ1つ掘り下げながら10年間を振り返っていきます。
素敵なイラストは、渡辺平日さんとユニットを組んでいるイチハラマコさんによるものです。
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