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もくじ

1. 平安伸銅工業の歴史 
2. TENTについて 
3. 老舗メーカーとデザイナーの出会い 
4. アイデア出しとネーミング
5. 改善とイノベーションとの違い
6. オワコンから広がる可能性
7. モノを持たへん時代に、何作る? 

4. アイデア出しとネーミング

TENT青木 はい、それでは、当時の資料を少し眺めながらプロセスについて話していきますね。

冒頭のコンセプトムービーを見て製品を見ると「コンセプトを考えて、モノに落とし込んで、スパッとできたんだろうな」「さぞかしスタイリッシュにやられたんでしょうなあ」って思われるかもしれないんですけど、実際には、全くそんなことなくて。

そもそも平安伸銅さんから一番最初に会って言われたのが「なんかおもしろいことしたい」っていう話だったんですね。

岩崎さん ある種よくある言葉ですよね。

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TENT青木 はい。では、まずはどうしたらいいんだろうっていうところなんですが。最初にやったことは、集まって、おふざけ半分でブレインストーミングをやるっていうのをやりました。

5人くらいギリギリ入れる狭い会議室があったんですけど、そこに1日中缶詰になって、笑いながらただひたすらアイデアを出しました。

それでアイデアって言っても、突っ張り棒を新しくしようって固く考えても面白くないんで「なんか面白いことを話しましょうよ」っていうことで集まったんですね。

ただ、言葉で喋ってるだけっていうのも意味がないんで、そこで話している会話を、1案1枚でカードにささっとスケッチにしていくんです。ばーっとたくさん何百枚も描いて、まあ、面白く笑った、と。

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岩崎さん これはみなさん4人で描いたんですか?

TENT青木 そうですね。僕たちが代筆したものもありましたけど、基本的にはみんなで描いていますね。すごく馬鹿らしい案がいっぱいあるんですけど、この中にも、最後に製品になったようなものも存在しているんですね。


TENT治田 そんなスケッチを経て「たくさん描いたねー」って、この日は飲みに行って。そこでこのカードをめくりながら「あれがいいね、これがいいね」なんて話をしていたと。


TENT青木 その日は「楽しかったね」で終わったわけです。 このおふざけ半分のブレストっていうのは、使える案を出そうっていうのは、実は考えていなくて

それよりもその時にコミュニケーションとか、いろんな過去に考えて来たことを全部出して、デトックス的にすっきりするとか。この人は何で笑うんだろうとか、そういうのをリサーチするプロセス、、、だと、いま、振り返ると思いますね。


TENT治田 どういう価値観や好みの人かを見るんですね。


TENT青木 ここから、TENTのほうで、綺麗な資料にまとめるということをしました。このプロジェクトはそもそも何をやりますかっていうのを、整えた資料にするんですね。



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TENT治田 2回目お会いしたときのプレゼンテーションの内容を一部見ていただいてますね。


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TENT青木 はい。まずは、これまで縁の下の力持ちだった突っ張り棒を、友人に自慢したくなるような存在にしませんか、ということですね。

そして、そのときの存在感をどのようなものにしたいかっていうのを、ブレストした時の雑談から拾って、いろんな店舗やイメージ写真を並べているんですね。雑談の言葉のままだとフワフワして消えちゃうんですけど、文字と写真でを並べることで明確にするんですね。


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ごく一部をお見せしたわけですが、こんな感じで、いったん資料としてまとめて、参加者全員でちゃんとゴールイメージを合わせるっていうのがとても大事で。

それで、ここまでは、まあコンセプターとかプランナーとか、コンサルティングの人なんかもやることだとは思うんですけど、TENTは、ここまでは最低限のコミュニケーションだと思っていまして。

この先の、具体的な商品スケッチを初回から持って行っちゃいます。寸法までとれるくらいの、図面としてのスケッチを、最初からもう、出し惜しみしないでいっぱい出しちゃうんですね。それで、平安伸銅さんとのキャッチボールの中から方向性を探るんですね。

デザイナーに頼むと「言うことを聞かなきゃいけないんじゃないか」とか「押し付けられるのかな」とか思われるかもしれないんですけど、少なくとも僕たちは、いっぱい出して、違うなら、また何度でも提案して。気が合うところまでとにかくチューニングを合わせていくという方法をとっています。

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その具体的なスケッチに関しては、、、、、

申し訳ないんですが、今日は内緒です。


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(会場笑)

それで、実はその後も、すごく迷っていた時期っていうのもあって。

これは迷っている時にグチャグチャの状態をどうにかしたいっていう資料の一部を抜粋したものなんですけど、

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そもそも最初は、棒の中に電気のケーブルを埋め込んじゃえとか、そういう構想で進んでいたんです。でも、現実的に考えると、今まで突っ張り棒だけを作っていた開発に対してあまりにも突然の話だし、ハードルが高すぎるということがあって。

もうプロジェクト自体をやめましょうという話にもなりかけた、そういう時期があったんです。


そのときに、いったん落ち着いてコンセプトを見直しましょうと。
高性能の棒を開発するのではなく、シンプルな一本の線に棚をつけて家具、一本の線にケーブルや電球をつけて照明。そういう考え方に変えましょうという提案です。

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一般的には「電源が内臓された棒」という当初のプランができなくなる時点で、妥協というか、すごいネガティブなことになると思うんですけど。

それを「だったら一本の線に、アクセサリーを加えていくという考え方に変えちゃおうよ」っていう、大きな転換があって。

最初のプランに固執せずに臨機応変に考え方を変えることで、妥協ではなく、コンセプトがシンプルで強いものになったっていうことが、このときにあったんですね。

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TENT治田 ここまで立ち返っちゃうと、いわゆる既存の突っ張り棒の構成に戻っちゃうから、そこが怖くもあるんですよね。

ただ、一本の線にオプションパーツを増やすっていうことで、すごく可能性が広がるっていうことが同時に見えて来たから、こっちに舵が切れたっていうのはありますね。


岩崎さん 出会いからここまで、どれくらいかかっているんですか


TENT青木 2015年の年末に最初のメールがあって、それで2016年1月くらいから具体的なスケッチ提案をたくさんしていました。 

平安伸銅さんの面白いのが、TENTが何個スケッチを出しても「全部良い!」って言ってくれるんです。普通は逆なんですけどね。


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これ、すごい嬉しいんですけど、おかげでなかなか案が定まらなくて。全部の案を具体化するのは時間も予算もないから絞らなきゃっていうことで、最初のスケッチから3ヶ月後に、なんとか案を絞り込んで、その3ヶ月後には試作品で展示会出展していました。


岩崎さん なるほど、スタートから約半年で展示会出展。そこからさらに1年かかって本日、この照明含む全部が発売されているということですね。


TENT治田 照明以外の商品に関しては、展示会から半年後くらいには発売されていましたね。

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岩崎さん 次にブランド名に関してですが。


TENT青木  はい、今は「一本の線」でバシッと決まっているんですけど、実は最初は全然違うことを考えていまして。

突っ張り棒でブランド名をつくるっていうことがある程度決まった段階で、テンションとかアテンションとかハイテンションとか。こんな名前をいくつか考えていました。

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今思うとゾクゾクしますね。なんでこれがいいと思っていたんだろう。

あとは、仮設という意味とか、どこにでも使えるとか、ピタっととめるとか、そういういろんな名前を出していたんですね。

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それで、「線をひく」っていう意味の Draw the line なんてのもありますけどねーなんて、話したんですね。 そうしたら、女性のスタッフさんが「これがいいです!」って拾ってくれて

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みんなでその場で声に出して読んでみたんです。
「ドロー ザ ライン」 
「あ、たしかに、これはいい。」
その場で満場一致で決定。 


岩崎さん 「THE」が「A」になったのはなぜですか?


TENT青木 すでにその頃にはプロダクトのプランがなんとなく見え始めていたんですが、ちょうど、一本の線に下げる棚のプランが存在していたんです。


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これを受けて「一本の線」としての意味を強調する「A」のほうが、プロダクトと一貫性があって良いということで、DRAW A LINE になった、という経緯です。


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岩崎さん
 なるほど。この名前になってよかったです。

それでは今度は、平安伸銅さんから、改めてTENTとの出会いを通して、どういうふうに気づきとか、実際の行動が変わったかを聞かせていただけますか

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