TENT青木 それでは治田さん、シリーズ全体のプロダクトデザインについて解説をお願いします。
TENT治田 了解しました。では説明します。
もくじ
1. コラボレーションの歴史
2. 始まりと出会い
3. プロダクトデザインという工夫
4. 譲ることと研ぎ澄ますこと
5. シリーズ名とストーリー
6. 3段ロケットのように
3.プロダクトデザインという工夫
TENT治田 炊飯ジャーや電動ポット、ホットプレートなどの製品って、僕たちが幼い頃から親しんできたものですよね。そういうものに対して「ハイテクで最先端の煌びやかさ」みたいなのは、正直、個人的には、あまり必要ないかなと思うんです。
種市さん たしかに、僕もそう思います。
TENT治田 たとえばフライパンとか鉄鍋、木ベラとかの「道具」らしいものって、キッチンにそのまま出しておいても嫌じゃないじゃないですか。絵になるというか。そういう道具らしい存在感のものができないかなと思ったのが、着想のきっかけではあります。
TENT青木 その頃「道具らしさってなんだろう」ってTENTみんなで話し合いまして、ひとまずメインの機能が一目でわかること=道具らしい佇まいなんじゃないかっていう話になりました。
TENT青木 そこから各自でアイデアを展開した結果、「加熱する形」「保温する形」「配膳する形」という方向性が浮かび上がりました。
TENT治田 最終的な案として選ばれたのが「配膳する形」としての、このUTSUWA(うつわ)案ですね。食卓に置かれた時の佇まいから着想した形です。
TENT治田 土鍋や茶碗って底面に釉薬がない素地の場所がありますよね。それに倣って、接地面の素材感が切り替わっていることで置くことに配慮した形にできるんじゃないかと思いまして。
種市さん だから色が切り替わっているんですね。ちなみに、上に広がっている形状については、何かあるんですか?
TENT治田 炊飯ジャーっていうと、中に何かを封入したような丸っこい形状が当たり前とされていたんですけど、今回は「うつわ」であることを優先したかったので、お茶碗や食器にもあるような上部に向かって広がる形を採用しています。
TENT治田 実際、下部で加熱し上部で操作パネルや料理へアクセスするという行為の流れがあるので、この上部に向かって広がる形状は感覚的にも納得がいくなあと思っています。
TENT青木 ちなみに、今回、シリーズ全体を通して、一周回って画期的だなと思う箇所があるんですけど、ここについても質問していいですか?
TENT治田 一周回ってですか。どこだろう?どうぞ。
TENT青木 「デザイナーがデザインしたスタイリッシュな家電」とかっていうと、操作パネルの印刷文字を英語にしたり、小さくしたりしがちですよね。
堀本さん たしかにそういった家電は多いかもしれないです。ZUTTOシリーズでも、ボタンをアイコンで表記していました。
TENT青木 一方で今回のSTAN.シリーズは、象印さんの通常の製品と同じく、大きな文字で、日本語表記が入っている。ここはどんな意図があったのかなと。
TENT治田 そうですね。今回のシリーズは、そういった「いわゆるスタイリッシュさ」を狙ったものでは無くって。家族みんなで親しみを持って使えるものというゴールイメージがありました。
それに加えてやはり、お爺さんお婆さんも含んだ3世代家族でも安心して使えることも理想としてはありました。
TENT治田 そういった幅広い世代が使う時には、やはり長い歴史で培われた象印さんの家電のルールに従った、文字の大きさ、色などは準拠すべきと考えたんです。
種市さん ふむふむ
TENT治田 ルールに従いつつも、極力色使いをシンプルにして、文字のレイアウトについても微細な調整を行なっています。
その上で、実は工夫はそれだけじゃないんです。
TENT青木 ふむ、さらなる工夫が。
TENT治田 インテリアと馴染むプロダクトを成立させるために、実は形状で工夫した点があります。
操作ボタンや機能表記を上面に集約していて、その面を周辺より一段へこませています。こうすることで、離れて見た時には操作部が目に入りづらいようになっています。
TENT青木 なるほど。離れて見た時、つまりインテリアの一部として見える時には極力シンプルになり、近づいた時、つまり使用するときには、これまで通りの「安心の家電」として使える。
堀本さん 使う時以外は静かな佇まいにしようということで、ボタン表記が光で浮き上がるタッチパネルなどの方法も開発途中では候補に上がりましたが、このシリーズはコストの面も重要でしたし、「使いやすさ」を意識して現在の仕様に落ち着きました。
TENT治田 はい、極力スタンダードな構成の中で、使う時と使わない時との二面性を持ったプロダクトができたと自負しています。
種市さん なるほど、そういうところも考えて、この形なんですね。
TENT青木 そういえば、表面の質感についてはどうですか?底面には、当初はコルクなど全く別の素材を使うことを想定していましたね。
TENT治田 そうですね。素材自体も柔らかくすることで、より接地面に優しくするという意図もありました。
堀本さん ここの素材については、いろいろ検討しましたね。TENTさんが以前デザインされたNuAns NEOのように、本物のコルクを一体成型できないかだとか。印刷や表面の凹凸でできることはないか、などなど。
NuAns NEOのコルクカバー。
本物のコルクが樹脂と一体成型されている。
堀本さん ですが、やはり今回は高熱になる器具ですので、そのあたりの条件は厳しかったですね。
TENT青木 今回の開発に関わる中で、電気調理器具は加熱に対する条件が本当に厳しいのだとわかりました。
TENT治田 最終的には樹脂そのものの素材を生かして、何ができるかというところに行き着きましたね。
堀本さん 黒い部分のシボ(表面の凸凹)と、茶色い部分のシボ、色合いを、それぞれ本当にいくつも検討しました。
TENT青木 ということで、当初の予定と異なる素材にはなったんですけど、決して「やりたかった事ができなかった」ということではないですよね。
TENT治田 そうですね。今回は自分たちがターゲットユーザーということで進めているので、やっぱり自分のお金で買って、自分の家で長期に使うことを考えた上でベストを考えたい。
最終的な製品を見ても、安心して使える素材で、非常に満足のいく仕上がりになっていると思います。
堀本さん 実はこういうところ、TENTさんとお仕事してて「譲るところは簡単に譲る人たちだなあ」ってびっくりしてたんですよ。
TENT治田 え?そうなんですか?
堀本さん デザイナーって、良いところでもあり悪いところでもあると思うんですけど、こだわりが強いことが多いです。
それに比べると、TENTさんは設計の段階での変更にも「そうですか」と素直に応じることが多くて、最初は正直不安な時もありましたよ。
TENT青木 ええー!本当ですか?気づかなかった。
堀本さん いや、本当ですよ。
TENT治田 なるほど、それはすみません。。
堀本さん でもね、やっていくうちにその不安が無くなったわけなんですけど、例を1つお話していいですか?
TENT青木 はい、ぜひ。
象印マホービン株式会社さんの粋な計らいにより、TENTのストアでSTAN.シリーズが購入できるようになりました!
量産型クリエイティブ男性による発送作業の様子(イメージ)
STAN.シリーズは全国様々なお店でお取り扱いがありますが、デザイナー自ら梱包発送するのは、ここTENTのストアだけ!
中目黒の小さな事務所から、1つ1つ真心を込めて送付させていただきます。
量産型クリエイティブ男性による直筆サインの様子(イメージ)
また、つまらないものではございますが、直筆サイン入りお礼状も同梱して発送させていただきます。
よろしくお願いします!
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「あなたの暮らしにスタンバイ」
STAN.
by zojirushi
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