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7.モノを持たへん時代に、何作る?

岩崎さん
 では最後に、今回のイベントのタイトルにもなっているんですけど、「モノを持たへん時代」というのが大きな背景としてあるんですよね。

ミニマリストとか断捨離とか。一般の人も普通に認識するようになっていて、それってありだよねっていう空気もあると思うんですけど、それに対してはどのように思われていますか

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香予子さん モノを持たない時代って言われているんですけど、決してモノが必要ない時代とか、モノがいらない時代、ではないと私は思っているんですね。

いま直面している状況っていうのは、モノを持たないっていうのは、欲しいものがないっていうことなんじゃないかなあと私の経験で思っています。

具体的にいうとなにかっていいますと、私自身が去年中古マンションをリノベーションして住むっていうことを経験しました。そのときに、自分たちがこだわった空間をつくって、いざ住むとなったら日用品を用意しないといけないってなったんですね。

それで私たち日用品を作っている立場として、いろいろなお店を知っているはずなんですが、どこを探しても、私が欲しいゴミ箱がなかったんですね。


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一方で、私がこの会社に入るときに、友人に言われたんです。「突っ張り棒ってダサいよね。カヨちゃん会社に入るんだったら、おしゃれな突っ張り棒つくれば?」って。

けっこうあっさり言われていて、実はそこに答えがあったのに、私自身「これ以上何をすることがあるの?」って7年間対応していなかったんです。

もしかしたら、作り手側の問題として、日用品がすごくヒットした90年代から、選択肢、生活スタイル、情報が変わって来ている時代にあるのに関わらず、その変わったライフスタイルに適応するものを提供してこなかったんじゃないかっていうふうに思っています。

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岩崎さん 僕はこの、ユーザー側として思ったのは、ドローアラインを空間に入れれば、他のものを減らせるなあって思ったんですね。

棚とか、棚にたまるホコリもなくなるだろうし、収納箱もいらないなあとか。なので、これがモノを持たない時代にあると嬉しいものなのかなあっておもいました。TENTさんはいかがですか?


TENT治田 iPhoneが出て来たときに、電話機とFAXが、重たいAV機器が、でっかいテレビが捨てられた。どんどんモノを減らせたんですよ。

そのときに「あれ?これ、けっこう楽しいし自由だぞ」って気づいて。 この体験が、根底にみんなあって。捨てることを受け入れる土壌があるという気がします。

家具をドローアラインに置き換えることで、必要じゃないものが見えてくる
んですよね。そういう空気感をいま、感じています。

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TENT青木 その空気感に関して、持論があるんですけど。よく断捨離とか、ミニマリストとか、テレビなんかでも言われるようになって「流行っているね」で、終わっちゃうんですね。

でも「流行っているから、それに向けて何かを作ろうよ」っていうことでは全然ダメだと僕は思っていて。

「そもそも沢山の人が持たないことを話題にするのはなぜだろう」
「僕自身、なんで持たないことに気持ち良さを感じているんだろう」
って考えて行くと、身軽になったこと、所有しないことで、引越しにお金がかからないとか、いつでも旅に出られる感じとか、そういう暮らしって、すごい格好いいなあっていうところがあって。

それを突き詰めていうと、みんな鳥になって、いつでも自由に行きたい場所に行きたいんだっていう。漠然とした昔からの夢みたいなのにたどり着くんじゃないかなと思っています。 それであれば、そこに対応するものを僕たちは作るべきなんじゃないかなあと思うんです。

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なので、ミニマルという流行りのワードにただ合わせるのではなくて、鳥になりたいんだったら、翼をさずけるとか。そういうものづくりがあると思っていて。

世の中に溢れているワードに踊らされずに、本当は何をみんな求めているんだろうっていう仮説を、人それぞれ持ってみると、すごい楽しいことが起きるなって思っています。


岩崎さん それでは最後になりますが、みなさん一言ずつ 。


TENT治田 最初にお話いただいたときは、すんなりいけるはずだって思ってたんですけど、やっぱりそんな簡単なわけではなく。今日話していない紆余曲折が他にも沢山あったんですけど、振り返って見ると開発過程から結果まで良いストーリが描けている。良いエピソードを持ったプロジェクトになったんだなあって思いました。


岩崎さん 青木さんどうぞ。


TENT青木 デザイナーって「いつか世界的なイベントに椅子を出展するのが夢です」みたいなことになりがちなんですけど。今回の突っ張り棒のように、今は縁の下の力持ちだけど、暮らしに役立つ素敵なものを、もっと輝かせることができると思うんです。 勝っている人をもっと勝たせるのはやめてもいいんじゃないかなと。
 
そしてメーカーさんも「うちはこんなもんや。オシャレとかいらん。」と言わず「外の人と組むと、まだまだ輝く余地があるかも!」って思って活動すると、世界が明るく楽しくなると思っていて。そういうきっかけに、今日がなってくれるといいなあと思います。


岩崎さん 平安伸銅のお2人からも。


一紘さん ここまでこれたのはTENTさんのおかげでもあり、平安伸銅のスタッフのおかげでもあるので、プロジェクトとしては、感謝しかないと思っています。 我々は老舗メーカーなんですが、大阪には我々のようなメーカーがたくさんあります。今回の体験をみなさんに共有することで、大阪がまた盛り上がっていけばと思います。


香予子さん 今日はありがとうございます。ささやかながら、もがき苦しんでいる体験をさらけだすことで、ものづくりの会社もデザイナーさんも盛り上がって、みなさんの力で、暮らしが軽やかに快適になっていくということができればなあと思います。本日は本当にありがとうございます。


全員
ありがとうございました!!!!




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トークは以上で終了です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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