TENT青木 2020年2月1日。STAN.に新しくホワイトが発売されました。今回は番外編として、その「白」について、詳しくお話を伺いたいと思います。
TENT治田 よろしくお願いします。
象印 堀本さん よろしくお願いします。
番外編 白のひみつ
堀本さん STAN.(スタン)シリーズは、2019年の2月に発表されて以来、大変ご好評いただいています。
一方で、実は発売直後から「白も発売して欲しい」という沢山の声をいただいていました。
青木 僕も身近な人から「STAN.が欲しいけど、ウチのキッチンは白い家電で揃えているから、黒だと使えない」という声を何度か聞きました。
堀本さん そんな反響にお応えして、ブラックのシリーズが発売されてちょうど一年が経過した2020年2月、炊飯ジャーと電動ポットのホワイトを発売しました。
堀本さん とはいえ実は、TENTさんから提案いただいた初期の段階から、白のバージョンは想定されていたんですよね。
治田 そうですね。STAN.シリーズは「家電らしさ、ハイテクさ」ではなく現代のキッチンやインテリアに合う「道具らしさ」を目指し、鉄鍋などをイメージさせる黒を発売していましたが
実は、お皿やタイルなどをイメージさせる白も当初から提案していました。
青木 でも初めから白を発売しなかったのは、何故なんでしょう?
堀本さん まずは、STAN.は弊社にとっても全く新しい取り組みだったので、あまり風呂敷を広げられる開発状況ではなかったというのがあります。
1つ1つにしっかり集中して開発し、お客様からの反響を見定めた上で、どう広げていくか探っていく方法をとりました。
治田 とはいえ、デビューするタイミングで黒だけでラインナップを揃えたというのは、個人的にはすごく良かったと思ってます。
黒だけに絞り込まれたことで「家電ではなく道具」であり「うつわ」である、という狙いが、より明確に打ち出せたのではと。
青木 たしかに「白物家電」って言葉があるくらい、白って「あたりまえ」の色ですもんね。
堀本さん 黒だけで発売を開始したSTAN.は、結果的に本当に多くの方に受け入れていただけまして。
ここからさらに多くの方にお届けするために、ある意味「定番色」である白を出せるタイミングが、今やってきた、ということですね。
青木 すでにある製品の色だけを変更するって簡単そうに思えるんですけど、わりとパっと進められるものなんですか?
治田 スケッチ提案の段階に関していえば、すぐに描けてしまうんです。でも実際に商品を作るとなると、そうは行かなくて。
堀本さん 検討には多くの時間をかけましたね。
堀本さん ちなみに、今回の白シリーズは社内としては僕が担当者でした。
青木 デザイン室長、自らが担当!
堀本さん いろいろ現場が忙しい状況だったのもありまして。
青木 野球の古田監督の「代打、オレ!」状態ですね。
治田 僕は今回、そんな堀本さんと二人三脚で色の検討を進めました。
堀本さん 久しぶりに現場で色検討をしながら一番思ったのは「白ってやっぱり大変やなあ」ってことです。
青木 普通に暮らしてると「白は白じゃん」って簡単に思っちゃいそうですけど。
堀本さん 白ってほんの一滴で全く色が変わるんです。少しだけ黄色っぽいとか、赤っぽいとか青っぽいとか。
治田 白は、本当にそうですよね。冷たい印象になったり、暖かい印象になったり、その加減がものすごく難しい。
堀本さん 黒のときはスっと決まったんですけどね。白はもう、作れば作るほど、無限に可能性が出てきてしまうんですよ。
治田 黒も、もちろん赤っぽいとか青っぽいとか振り幅はあるんですけど、黒というだけである程度は方向性が定まる。それに比べると、白ってちょっとしたことで印象がガラっと変わってしまう。
青木 なるほどー。
治田 闇雲にあらゆる可能性を探っていても迷路に迷い込んでしまうので、STAN.らしい白とは何かを定めることにしました。
例えば陽の光が差し込むキッチンだったり、セラミックの器であったり、暖かくて美味しいものがある風景のような、しっとりした白をターゲットに設定しました。
最終的な製品の写真
治田 とはいえ、これがまたモニターや紙で見るのと、塗装した板で見るのと、実物に塗装して見るのとでは、全然違って見えるんですよ。
治田 さらに時間がかかったのが、底面の色です。
堀本さん 当初は底面の茶色については黒の時と同じものを使おうとしていたんです。でも白と合わせてみると、とても違和感のあるものになって。
治田 コントラストが強すぎて、一つの塊に見えなかったんですよね。違うものが、ただ乗っかってるだけみたいに見えちゃって。
堀本さん 白バージョンの底面として、黒バージョンと並べても違和感のないような絶妙な茶色。ここを探るのにかなり苦労しましたね。
治田 いっそ茶色じゃなくてグレーにしようかという時期もありましたね。でもそうすると血の気がひいてしまっているというか
青木 ミニマルとかシックとも言えるけど、温かみはなくなりますね。
治田 迷った結果、底面に関しても、釉薬を塗っていない部分があるセラミックの器で、比較的明るめの土の色のものを参照してみたり、様々な方向性で検討を行いました。
堀本さん 最後の最後まで、僕の方でも何度も調整を繰り返しました。この2つも違う色なんですけど、わかりますか?
青木 言われてみれば、というレベルですけど、たしかに右のほうが、やや冷たい印象があります。(写真より実物の方が違いがわかりました。)
堀本さん ここは、工場で樹脂の色を決定するための、最後のチップの段階でも、やや変更を入れています。当初の指定色よりも、少しだけ温かみのある
色を採用しています。
青木 本当に細かい、、、
治田 今回の白バージョンは、僕自身とっても納得しているんですけど、色だけの話ではないと思ってて。
青木 と、言いますと?
治田 STAN.は比較的シンプルな塊の形状です。だからこそ、温かみがあっても成立したんですけど、今回と同じ白色をもっと丸っこい形状のものにあてはめたら、もっと違った印象になってしまったと思うんですよね。
青木 なるほど、この形があってこその、この色だ、ということですね。
ちなみに、ボタンや象さんマークは黒ではなく少しグレーになってますね。
堀本 そうですね。保温ボタンの赤い線も、当初よりやや抑えめに調整しました。読みやすさは損なわないようにしつつ、家の中で主張しすぎることがないよう微調整しています。
青木 では最後に、これを読んでいる方へのメッセージなどありましたら。
治田 いろいろお話してきましたけど、実際に生活空間で使っていただく時にはごく自然に違和感なく受け入れてもらえる、STAN.らしい白バージョンができたと思っています。
堀本さん 弊社でこれまで作ってきた製品とも違った新しさがありながらも、懐かしさも感じる、しっとりした白です。実物を見ていただけると嬉しいです。
青木 白バージョンが加わって、より多くの方の「暮らしにスタンバイ」しやすくなったSTAN.シリーズ。これからもよろしくお願いします。
ありがとうございました。
象印マホービン株式会社さんの粋な計らいにより、TENTのストアでSTAN.シリーズが購入できるようになりました!
量産型クリエイティブ男性による発送作業の様子(イメージ)
STAN.シリーズは全国様々なお店でお取り扱いがありますが、デザイナー自ら梱包発送するのは、ここTENTのストアだけ!
中目黒の小さな事務所から、1つ1つ真心を込めて送付させていただきます。
また、つまらないものではございますが、直筆サイン入りお礼状も同梱して発送させていただきます。
よろしくお願いします!
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